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♪ Cachita Mia ♪
panchos


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 第二話

御近所付き合いの始まり

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モデルハウスのご縁

 私の買った土地は農地で(だから、そこに住宅を建てるには許可が必要なんですが)御近所の地主さん達は、ほとんどの人が2、3キロ離れた所に有る部落に住んでいます。
 で、その御近所さんとのおつきあいを始める切っ掛けとなったのが、このれんが造りの家との出会いでした。
 田舎に住みたいと思った時私がイメージした、そこに建てる家は、徹底的な田舎家でした。
 勿論、永年染み付いた、贅沢と言うか、怠惰な生活スタイルを変えるのは容易なことではないですから、それなりの利便さは保つものの、飾りっ気は一切無いものにしようと思っていました。
 ところが、第一話でお話した、土地の売買手続き書類を作っくれた秘書嬢の住むこの家を見た途端、気持ちが変わりました。
 それは、煉瓦を積んだあとの上塗りを省略したような外観なんですが
(あとで家の構造のところで詳述しますが)実は、そう見せていて、数段良質な煉瓦を使い、積む時の作業も手の混んだつくりなんです。
 無いものも、有るように見せたがる人の多いこの国での、そういう憎いテクニックが気に入ってしまいました。
 素敵な家ですね、我が家もこういう風にしたいと言うと、えらく喜ばれて家の中をくまなく見せてくれ、すっかり意気投合した家内と、この家のセニョーラの間で昼食パーティーの約束が出来上がったというわけです。
 この家の主人は、かって名主もつとめたことのある、この辺りの名士らしく、大工の棟梁の紹介や、建築許可申請への口添え等、力になってくれると言うことで、お見知りおき戴くには大変頼もしい人とのラッキーな出合いとなりました。


コミーダ(昼食会)

 母屋の向いに有る、納屋兼車庫みたいなとこに調理場が有って、その前にテーブルを並べ、4、5家族30人ぐらいが、子供、若者、壮年のグループに別れてパーティーのはじまりです。

 ここの主人は羊を300頭程飼っており、息子は獣医、もう一人の息子は家畜の飼料なんかの商売をしていて、農家ではないようです。
 でも、昼食に招かれて来る人の中には、御近所の農家の人が居るんじゃないかって、期待してたんですが、全員泥臭くない人たちで、ちょっと拍子抜けしました。  ま、ま、焦らずに行きましょう。
 若者達が、焼肉の炭を起こしてる間に、持ち寄りの清涼飲料水やおつまみと、今日のもてなしの目玉、樽テキーラで、かんぱ〜い!

壮年グループの乾杯、男女に別れてて面白い
樽酒の前で、焼そばに苦戦する主人エミリオ
 我が家からは、私は何もしませんでしたが、家内が工夫した百%国産の焼そばの材料を持って来ました。
 市内には数軒日本食レストランも有り、「スシ」「サケ」程度の言葉は知っていても、「ヤキソバ」は、皆初めてでおおいに喜ばれました。


そばを炒めるセニョリータ、箸使いも器用
年輩者グループ、左端がこの家の主人
おどけて箸を使う若者グループ
 対するこの家のもてなしは、当然ですが、メキシコ料理。  樽酒ならぬ、樽テキーラは、黄金色で少しトロっとした感じの絶品。  皆、話が主で、時折ちょこっと舐めるだけなんですが、話について行けない私は、間が持てず、ついつい飲み過ぎてしまいます。
 そうこうするうちにドラム缶で作った炉の中に炭火がおこり、焼肉が始まりました。 脇で焼かれてるピーマンみたいなのは、これがチレ。  くり抜かれたヘタを抜いてみると、チーズが詰められています。  白く丸いものは、トルティージャにチーズを載せたもので、ピリカラのソースがあい、実に美味。
 小たまねぎや小じゃがいもは一個々々アルミフォイルに包まれて、とろ火の中で焼かれます。


肉、チレ、白く丸いのはケサディージャ
チレの中にはチーズが詰まっている
フォイルに包まれた小玉葱と小ジャガ芋

 しかしなんと言っても、今日の絶品は、これ、いんげん豆のスープ。  見ただけで汗が出そうな色で、もちろんピリカラ。
 材料はって聞くと、いんげん豆、ベーコン、ソーセージ、豚の皮の空揚げ、シラントロンという香草、エトセトラ、エトセトラ、あとはもう聞くだけ野暮ってもんで、それらを混ぜただけで、この味が出るもんじゃないんですよね。
 お玉杓子でソーットかき回してみると、クッタクタに煮込まれた大きな真っ赤なチレが、三つも四つも出て来て、こりゃぁすげーって、また汗が出て来ました。
 あまりの美味しさにお代りをしたところで、焼肉とチレが出て来てしまいました。 これもいい匂いがするんで、戴こうとしたら、フォークは有るのにナイフがついて来てないんです。  あれ、忘れてんのかなって、他の人のお皿をきょろきょろ見てたら、こうして食べなさいって、トルティージャを二つ折りにしてその間に挟んで食い付いてみせてくれました。  いやはや、ナイフで切ったものなら残せるけど、食い付いたものを残すのは汚らしいんで、いやでも残さず食べてしまい、そのあとの苦しさは大変なものでした。

 こういったパーティーに招かれたのは、勿論、これが初めてでは有りませんが、今回気がついたというか、今迄のとちょっと違った雰囲気を感じました。
 というのは、私がこれ迄おつきあいして来た人たちとのこういうパーティーの場合、男主人も先頭に立って、肉を焼いたり、客に酒のサービスをしたりする人が多かったのですが、ここの主人はテキーラの樽の前にデンと座ったきり最後迄何もしませんでした。
 客の方も、亭主達は男主人の前で飲んで喋るばかりで、奥さん達や、若者があれこれ手伝っているのと対照的でした。
 で、思ったんですが、男もかいがいしく立ち働くのは、都会に住む、欧米のライフスタイルに感染した人たちで、ここにいる人たちは、家事は女性という、昔ながらのスタイルの人なのかな、、、と。



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