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♪ Carnaval ♪
panchos


cactus2
 第一話

土一升、金一升

cactus2

 州都の私の町は、その昔、隣の州から分離したという生い立ちがあり、もともとはこの辺りの中心地ではなかったんです。
 ですから旧い町の中心部は、地方土地の風情で、私には州都としての風格に欠けるように見えます。
 それが近代化の波にうまく乗って、多くの企業の工場誘致に成功、急成長しているのです。
 私の住んでいる辺りは、第二環状線沿いで、ゴルフ場が有るくらいですから、その昔は郊外だったのですが、今や、大手のスーパーや自動車ディーラーが林立しています。
 そして、その第二環状から外には、低所得者住宅団地があちこちに散在し、未だ建設が終わっていない第三環状の外に迄広がりつつ有ります。
 そして、その一番外側に有るぐらいの団地の辺りから農村地帯が広がり、私の買った土地はその辺りの一角に有ります。
 御覧のように、風光明美でもなんでもなく、あたりはあまり手を入れなくても育つトウモロコシとか、牛のえさにするトウキビや、アルファルファなどが生い茂っています。
 ちなみに、お値段は5千平米で小型乗用車でおつりが来るぐらいです。


辺りの風景、その1
辺りの風景、その2
御近所でとうもろこしを戴く


土地売買を仕切る「名主」さん

 現在私が住んでいるところを買った時は、売り主と一緒に弁護士事務所に行き、契約書をかわして、それを持って役所に登記に行くという、日本とあまり変わらない手続きでした。
 ところが農地の場合は、その昔の革命で大地主からとりあげ農民に配った名残りか、地主各人が、売買した時点の大統領の名前が仰々しく書かれ、その割には紙質のお粗末な権利書を持っているんです。

 そして、これを持って、売買の両人が、共同農地組合長のところへ出かけるのです。  組合長は、日本でいえば、村長みたいな存在らしいのですが、村役場に居る訳じゃなくって、自宅に行くのです。  麦わら帽に長靴といういでたちの組合長は、ズボンについたわら屑みたいなのを払いながら裏庭から出て来てガサガサのごつい手で握手すると、秘書のところへいって、必要書類を作ってもらってこいといいました。
 その秘書は、これまた自宅に居るのですが、ドアも窓も開けっ放しなのに、誰も居ないのです。  通りかかった人が、今どこそこで見かけたから、間もなく戻ってくるよって言うんで、待っていたら、30分程して、トラックを運転して帰って来ました。
 こちらへどうぞってとおされた部屋には、期待していた旧式のタイプライターでなくパソコンが有りました。  場違いでチグハグな感じに戸惑っていると、慣れた手付きでキーボードをたたき、プリンターから出てきた書類をとりあげて渡してくれました。

土地証文
裏面には地形が描かれている
 組合長のところへ戻るともう薄暗くなっていて、牛を小屋に入れに行ったからちょっと待ってくれと言うんで、地主のうちの、土間にベッドとくたびれたソファーが有るだけの部屋で、ヤンキースとマーリーンズのワールドシリーズを見ながら待ちました。
 マーリーンズのリードで気を良くして、このまま終わり迄見たいと思ったんですが、生憎と言うか思い掛けなく早く、使いの人が、組合長のサインと、トラクターの絵の入った公印のおされた書類を届けてくれたので、そうもいかず、二人でお金を数えはじめました。
 数え終わって、二人が署名して、握手して終わりです。
 ヤンキーすが負けると良いねと言うと、相手も同感で、それまで空々しかった顔が初めてほころび、もう一度握手しました。



どこ迄が私の土地?

 建築工事を始める前に整地をすることになったんですが、権利書には土地をあらわす図形にセンチメートル迄の単位で寸法が書かれているのに、現場には何の標識も有りません。
 境界をはっきりさせたいという私の要望に応じて、土地を紹介してくれた人が、数日後人をつれて来てくれました。
 私は当然のごとく測距儀を持った人が来ると思っていたら、野良着姿のお年寄りがやって来て、あんたの土地は、こっから向こうだって、ゴム長のかかとで地面を擦って印をつけました。
 ま、広い土地に小さな家をたてるだけだから、境界線はそんなに厳密にしなくて良いのかも知れない、鷹揚なもんだって、半ば微笑ましく思いながら見ていると、じゃって、もう立ち去ろうとするんです。
 ちょっと待ってよ、私の土地は台形になっていて、南側と北側でかなり寸法が違うので、反対側も教えてくれって言ったら、いや、こっから畑の畝にそって進んで公道にぶつかったところだから誰でもすぐ分かるって言うんで私は絶句しました。
 でも、このお年寄りはこの辺りの土地とその所有者に関して熟知していて、皆その人の言うことを尊重するんだそうで、わざわざ境界の標識なんか打ち込む人は居ないそうです。
 あとで他の人に聞いた話では、勿論登記所に頼めばやってくれる仕組みは有るのですが、測量の起点になる標識が何キロも先に行かないと無かったりして、実際には難しい場合が有るそうです。
 家をたてる場所は、隣の土地との境界からはかなり距離をとるけど、公道にはできるだけ近付けたいので、公道との境はもっと厳密に知りたいって言うと、このわだちの辺りの幅4メートルが公道だって言うだけなのです。(左の写真)
 土地なんか沢山有るんだから、そんなにみみっちく考えなさんなって言うことのようで、土地一升、金一升の国からやって来た私にはまるでおとぎ話を聞かされているみたいです。



持ちつ持たれつの農民生活共同体

 私の敷地には近所の人の通り抜けによる道がついているのですが、これは閉めても良いですよねと念をおすと、いや、それは月二回もたれる寄り合いで皆と相談しなくていけないというのです。
 でも、ここは私有地なんだからっていうのは、土地一升、金一升的な発想のようで、現に街道から私の土地に辿り着くには、地図上の公道だけで行こうとすると、かなり遠回りになり、人さまの土地を横切る近道が出来ていて、そこの地主もそれを容認するように垣根を作っているのです。
 また、この辺りの水は共同の井戸から時間当たりいくらで権利を買うのですけど、その水路は公道を走らせるだけでなく、私有地も横切らなければならないんです。
 自分が水を貰うには他人の土地に水路を通らせてもらう代わりに自分の土地も通らせてあげるって考えるんだと思います。
 勿論全て公道を走らせることは理論的には可能だけど、そんなことをしたら、農地が減ってしまうから、皆で融通しあおうってことなんでしょう。



う〜ん、隣は何をする人ぞ、じゃ済まないのか、、、ちょっときついなぁ〜

じゃ、次回をお楽しみに。

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