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第一話
蝿の天敵
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有る程度覚悟はしていましたが、田舎の生活は心地よいことばかりではありません。
その一つがあまり気持ちのよくない生き物と同居していることです。
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トカゲ
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蛾
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毒蜘蛛(死骸)
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蛇
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サソリもどき(tijerillas)
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それと、これは誤算と言っていいと思いますが、私はここに移り住んだら日ながハンモックの上でうつらうつら過ごせると期待していたのですが、そうはいかないということです。
というのは、蝿がうるさく顔に止まり安眠させてくれないのです。
しまいにはビニールの紐で編んだ手提げの買い物かごをかぶって眠る始末でした。
これには、お隣が牧場という規模ではないのですが牛を飼っていることも原因の一つです。
ある日C君が、養牛場の向こうにある農園が蝿を駆除する天敵を培養しているのを見せて貰ってきました。
農園でとれた野菜はその場で冷凍野菜にするので、蝿は困りものなのです。
彼の報告がおもしろかったので、私も見せて貰いに行きました。
そこは研究室と呼ばれてますが、大型トレーラーの箱を改造したもので、その中で天敵を培養しています。
プロセスは、ざっと言うと、卵を孵化させて幼虫を一匹ずつ碁盤の目に仕切ったプラスチックの枠の中に入れると中で繭を作り成虫になるというものです。
おもしろいのは、この成虫がどうやって蝿を駆除するかということです。
その仕組みはこうです、体長1ミリほどの成虫を外界に放つと、これが蝿の幼虫の体内に卵を産み付け、これが孵って寄生虫となり幼虫を死に至らせるというのです。
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天敵の卵
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孵化した幼虫
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枠の中で繭を作る
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枠を並べた棚
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繭
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羽化した天敵の成虫
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この成虫は在来種でメキシコ中どこにでも居るそうで、要は自然界での蝿との勢力関係を人工的に変えようというものです。
食卓に群がる蝿を追おうとさえしないで食事を続ける人々が居る一方で、化学薬品を使わずに蝿を駆除しようという人がいるという、この対比が妙に印象的でした。
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